今週のお題「激レア体験」
時は十年以上前まで遡る。
※敬語の使い方等失礼になっている箇所もあるかもしれないので先にお詫び申し上げます。
ひょっとしたら祝賀パレードよりはレアな場面だったかもしれない。
たまたまその日、事前に知らせがあったわけでもないからである。
※当時の状況の為、上皇については「陛下」「天皇」と表記している。
祖母宅にて。知らせが入った。
「天皇陛下が近くを通られるぞ!」
当時私は小学生くらいの頃であった為、詳しいことは覚えていない部分もあるが
天皇というとすごく偉くて、簡単には拝見できない人物といった印象を当時の私は持っていたに違いない。
歌手等ならライブに行けばいいのだが、もう次元が違うような話だ。
どうやら指定の場所に集まれば車がその地点だけゆっくり走り、陛下のお顔を拝見できるとのことであった。
驚くべきことに、その場所は本当に目と鼻の先だった。
祖母と私が着いた頃には既に人が集まっていた。
詳しいことはよくわからないが、何日か前から告知されていたようなことではなかったようで、もしかしたらお忍びか何かだったのかもしれない。
集まっている人もそんなに大勢でないし、護衛もさほど多くなかったと記憶している。
写真撮影は禁止。
そして当時ビックリしたのが高台や家の二階など高い所から見下ろしてはいけないという決まりがあった。
失礼に当たる理由からだろうが、改めて「今からそこを通る人物はいかに偉い人なのか」を実感したのである。
余談だが少し笑ってしまったのが、それまでの間
車の影が見えると皆一瞬息を飲み、違うとわかるとガッカリする雰囲気が起こっていたことである。
しばらくして、それっぽい黒い車が見えると歓声が沸き起こった。
後部座席の窓を開けた車の中から、天皇がとても優しそうな笑顔で皆に手を振っていた。
思ったより車はゆっくり走っていたためか、じっくりその様子を何秒かかけて拝見することができた。
偉い人だからといって威圧感や恐怖は全く感じることはなく、
その笑顔と手でそこにいる人々をふわっと優しく包み込んでしまいそうな、やわらかいオーラのようなものを私は感じたと思う。
当時の私の感想は、「すごく優しそうなおじいさん」だろうか。
誰かが言った。
「一生に一度拝見できるかできないかの人物だろうなあ」
確かに貴重な体験だったと思う。
生前退位後の今なら尚更もう二度と訪れないだろう瞬間と思っても間違いではないだろう。
私は、上皇のあのときの笑顔を今でも覚えている。